【自作うどん】自宅で讃岐うどんを打つために必要なもの

【自作うどん】自宅で讃岐うどんを打つために必要なもの

うどんを打ち続けて約20年になりますが、まだまだ理想のうどんは打てません。

20数年前、東京には美味しい讃岐うどん店があまりありませんでした。当時は格安航空会社も無く、うどんを食べるために年に何度も香川県に行くことは金銭面で困難でした。讃岐うどんが大好きな私は、うどん欲が満たされない日々にストレスが溜まり、「美味しいうどんを食べるために香川近辺に転職しようかな」と、本気で考えるほどでした。

うどん欲を抑えながら東京暮らしを続けているうちに「自分で打てるようになれば、いつでも美味しい讃岐うどんを食べられる!」ということに気が付きました。その時から、私の手打うどん修行が始まりました。

レシピをネットで調べ、スーパーで小麦粉を買い、麺打ち用の鉢が無かったため土鍋を使って打ちました。綿棒は、たまたま家にあった長い丸い棒です。現在は、気温・湿度によって水・塩の配合を変えたり、寝かし時間を変えてみたりと、自分なりのレシピを研究していますが、いまだに土鍋を使っています(笑)

材料は『小麦粉』『水』『塩』『打ち粉(でんぷん)』

さぬきうどんの麺の材料は『小麦粉』『水』『塩』『打ち粉(でんぷん)』だけです。複数の『小麦粉』をブレンドしたり、『タピオカ粉』を入れたりなど、さまざまな工夫をしているお店がありますが、1種類の『小麦粉』だけでも十分に美味しいうどんができます。

讃岐うどんの材料①『塩』

その日の気温や湿度によって加水率や塩分濃度を変えます。以前、塩を入れ忘れた時がありましたが、不思議なことに普段と同じくらいのコシがありました。今後、検証が必要なのですが、個人的には「塩分濃度はうどんの仕上がりにあまり影響しないのではないか?」との仮説を持っています。

ただし一般的な定義としては、公正取引委員会承認10品目の『さぬきうどん』の条件の一つに「粉に対して3%以上の塩が入っていること」と定められています。とりあえず、塩は入れましょう。粉のプロである北東製粉㈱のHPに『うどんにはなぜ塩水(塩)を使うのか?』が記載されています。

さぬきうどんの材料②『水』

一方、加水率(小麦粉に対する水+塩の割合)は繊細です。小麦粉を団子状にした時の柔らかさが全く変わります。ラーメンでイメージすると分かりやすいと思います。ラーメンは通常、加水率35%程度ですが、加水率が40~50%の『多加水麺』は表面がプルプルしていて中はモチモチです。喜多方ラーメンやつけ麺など、太めの麺に使われることが多いです。加水率50%以上になると『超多加水麺』と呼ばれたりします。

加水率が高いと麺と麺がくっつき易くなり、製麺機などの機械でうどんを打つのが難しくなります。しかし、手打ちなら可能です。私は以前、加水率53%超のうどんを打ったことがありますが、透明感がありモチモチでした。

加水率について、公正取引委員会承認10品目の『さぬきうどん』の条件では「小麦粉重量に対し40%以上」と定められています。また、いろいろなお店や製粉会社のHPには、気温や湿度ごとの最適な加水率が記載されています。それらは目安にはなりますが、実際には小麦粉の種類や、うどんを打つ室内の温度・湿度など個別の環境によって最適な加水率は異なります。

つまり、自分が麺を打つ環境に最適な加水率は自分で見つけるしかありません。団子を練る時・延ばすときの感触や色合い、食べた時の食感など、自分で作って自分で食べるからこそ、肌で感じて分かることがあります。改善を繰り返して少しづつ経験(スキル)を積むしかありません。同じ店でも職人によってうどんの美味しさに雲泥の差がでるのは、そのためだと思います。同じ店なので、修行を始めたばかりの若者も、ベテラン職人も材料や基本となる製法は同じです。しかし、出来上がったうどんは全くの別物になる場合があります。

その主な要因は、優秀な職人は、その日の環境変化を感じ取り、臨機応変にマニュアルにはない対応をしているためです。お店の『小麦粉』を頻繁に変えることはできないので、変更できるのは『水』と『塩』の量だけです。単純だけに、うどん打ちは奥が深く難しい作業なのです。

さぬきうどんの材料③『小麦粉』

温度・湿度などの環境変化によって『水』と『塩』の量を変えることの難しさに、うどん打ちのハードルが上がったと思いますが、うどんの良し悪しに影響する一番大きな要素は『小麦粉』だと思います。うどんの材料の中で、一番使用割合が多いのが『小麦粉』なので当然ですね。本場の讃岐うどん店が使っている『小麦粉』を買ってネットのレシピに従って作れば、初心者でも十分に美味しいうどんが打てます。

プロが使う讃岐うどん用の小麦粉はスーパーではあまり売ってないので、私はネットで購入します。小麦粉や打ち粉は安いのですが、送料が勿体ないのでまとめ買いします。まとめ買いした大量の小麦粉を賞味期限までに使い切るためには、まずまずの頻度でうどんを打たなければなりません。その結果、自然と経験が積め、少しづつ上手になるにつれ、うどんへのこだわりも強くなります。

うどん打ちをはじめて数回は面倒な気持ちの方が勝りますが、慣れてくれば探求心が生まれます。老後も含めた将来、最高に美味しいうどんを食べるための修行だと思えばモチベーションが上がります。

さぬきうどんの材料④『打ち粉(でんぷん)』

プラスするなら『打ち粉』も重要です。打ち粉には各種でんぷんを使います。私はしばらく打ち粉にスーパーで売っている『片栗粉』や『コンスターチ』を使っていました。ある日、『さぬきうどん用小麦粉セット』に付いてきた『専用の打ち粉』を使ったら、うどんの美味しさが数段アップしました。それからは、『専用の打ち粉』を使っています。

『打ち粉』が無かった時、代わりに『小麦粉』を使ってみましたが、普段よりも美味しさが落ちました。うどん打ちには、結構な量の『打ち粉』を使います。うどんの表面には『打ち粉』が付着します。茹でている時に落ちるという説もありますが、私は『打ち粉』は、うどん一部であり、うどんの表面の食感に影響する重要な要素だと考えています。

うどんの種類別の難易度は?

初心者にオススメするのは、「冷たいうどん」→「釜揚うどん」→「温かいうどん(かけうどん)」の順番です。

茹で上がった麺を冷水で絞めれば、ある程度コシのある麺ができます。しかし、温かいかけうどんの場合は再度その麺を温めて熱い汁をかけます。温かい環境に包まれた状態でしっかりしたコシと延びを保てるうどんに仕上げないと、麺はコシを失います。

本当に美味しいうどんは、天ぷらなどのトッピングが不要です。むしろ、トッピングがうどんの美味しさを邪魔します。トッピングなしで食べたいと思える温かいかけうどんが打てるようになれば、うどん職人として成功した証だと思います。ちなみに、私が打った温かいかけうどんには、美味しいトッピングが必須です(笑)

好みはあるでしょうが、私は「山越うどん」ではトッピングをしません。東京神田にある「丸香」(山越系)でも、トッピングなしで3玉のかけうどんを飽きることなく食べられます。どちらもシンプルな讃岐うどんなので、初回訪問時は「たいしたことないうどんなのに人気がある店だな」と生意気な感想を持ちましたが、訪問を重ねるにつれシンプルな中にある奥深いものに惹かれていきました。

『小麦粉』『水』『塩』だけの単純な料理だけに僅かな違いが、食感や味わい大きな影響を与えます。私の持論ですが、本当の食通は、お店から与えられた料理では満足しません。料理の知識が豊富で、常に自分専用の一流シェフを雇える大富豪なら別ですが、自分に最も合う料理を作ることができるのは自分です。一朝一夕にはいきませんが、自分に合った最高の讃岐うどんを探し続けることも、日常の楽しみの一つになるのです。

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