※この記事は、コンサルや業界分析に興味がある方以外は超つまらない内容となっています。
お店のラーメンの味をそのまま自宅で食べられる『宅麺.com』と実店舗の商品の差については、<【ラーメン】実店舗と比較した『宅麺.com』の長所と短所 | 鮨と麺だけあればいい (sushi-men.com)>に記載しましたが、ラーメン業界のネットと実店舗では他にも異なる点が多くあります。
数字で表すとができる「定量的」な側面と、数字で表すことが難しい「定性的」な側面の2面から比較してみたいと思います。
『宅麺.com』と『実店舗』を定量的な項目で比較
定量的な指標として、必要となる”お金”、”時間”、”労力”の3観点があげられます。(”労力”=”工数”の意味)
基本的には、ラーメンを食べるためだけに外出・移動することを前提として、比較した結果が以下表です。
お金に関しては、『宅麺.com』の場合、「自宅での調理や食後の後片付」が必要となり、水道光熱費が発生します。しかし、その金額は微々たるものなので「お店までの交通費」よりも「送料」の方が安ければ『宅麺.com』に優位性があると判断して良いでしょう。
時間に関しては、『宅麺.com』では「自宅での調理/片付け時間」が必要となり、『実店舗』に行く場合は「往復の移動時間」や「お店での待ち時間(行列/調理)」が長時間発生します。食べるという目的だけであれば、圧倒的に『宅麺.com』が優位でしょう。ただし、宅配BOXなどが無い家庭だと宅配予定時間帯に在宅していなければならないという時間拘束が発生します。
労力に関しては、『宅麺.com』では「自宅での調理/片付け作業」が発生します。簡単な作業とはいえ、料理が嫌いな人にとってはマイナスポイントになるでしょう。しかし『実店舗』では、「外出や移動の労力」はもちろんですが「行列待ち」など有名店だからこその労力が必要となります。
定量的に分析すると『宅麺.com』のビジネスモデルは将来性がある
定量的に分析すると、有名ラーメン店舗に足を運んで食べに行くことが、いかにムダで非効率的なことだと気づくでしょう。
IT環境の向上に伴い、効率的に満足度の高いものを手に入れることに価値を感じています。今後は、目的の一つに会食があるジャンルを除き、食べることが目的のラーメンなどのジャンルでは「お店の中で食べる」という行為が、今以上に減り、代わりに自宅でお店の味をそのまま再現する商品は増えるかもしれません。お店からすると、その方が商圏が全国どころか全世界に広がり、売上を莫大に増やすことができます。しかしながら、まだまだ課題も多く、発展の余地があるビジネスモデルなので今後の進歩が期待されます。
ただし、市場が活性化する場合は、東洋水産や日清食品などの麺に精通した大手食品製造業が有名ラーメン店の競合となるでしょう。現在、大手食品会社は有名ラーメン店の店名を商品名にして、生めんと濃縮スープがセットになったラーメンを販売しています。一般家庭向けの価格設定であり、そのためか味の方もお店の味よりもレベルダウンしていることが多いと思います。しかし今後、多様なノウハウと設備を持つ大手食品製造業が本気で質の高いラーメンを作ってスーパーに置いたら、価格・質ともに消費者が納得するものになります。流通手段が確立されていて、新鮮な肉・野菜・魚介類など様々な食材がそろっているスーパーであれば、消費者は自分の好きなラーメンに必要なものを必要なだけ購入することができるからです。客層が若いコンビニでは、既に有名店の味を再現した高価格の「生めん+スープ」が販売されていますが、より満足度が高い商品が開発できれば、家庭向けにも普及するでしょう。
消費者がラーメン店に求めるものは?
ほとんどの有名ラーメン店の麺は製麺所から仕入れています。ラーメン店ではその麺を茹でているだけです。一流の製麺所では、営業さんに希望を伝えれば、試作を繰り返して理想の麺を作ってくれます。メンマやチャーシュー、煮卵などに特徴があるラーメン店もありますが、それだけを目当てにお店まで食べにくる客は少ないでしょう。つまり、多くの消費者がラーメン店に求めるものは、そのお店のスープなのです。スープによりラーメンの価値が大きく変わり、他の店との差別化が図れるのです。
現在は「セントラルキッチンだと味が落ちる」というのが定説ですが、多品種少量生産ができるセントラルキッチンで作ったスープを冷凍して、物流網も整えた上で有名店の味を安価に再現できれば、ラーメン業界が大きく変わります。大手食品製造業が名店そのままのレベルのラーメンをスーパーで販売するようになった後には、半導体業界やアパレル業界のように、個人事業主の店主が企画・監修だけを行い、製造は専門工場に委託してネットで販売するというラーメン店も現れるかもしれません。
『宅麺.com』と『実店舗』を定性的な項目で比較
実店舗で食べることのムダについて語った後ですが、メリットもあります。そして、その実店舗のメリットは人によっては全てを覆すほど大きいものだと思います。
定性的な項目として”リスク”、”即時性”、”環境”で比較したのが以下表です。
リスクに関して、コロナ感染も含めた「外出するリスク」の有無を考えると『宅麺.com』が優位です。
即時性に関しては、「今すぐ食べたい」という時は実店舗ですが、『宅麺.com』の場合は納品後には冷凍庫に保管して、いつでも食べられます。
定性的な項目では環境が一番重要です。お店に行くまでの道中での新しい発見、行列で待っている間の雰囲気、有名店ならではの店内の緊張感など、実店舗だけしか味わえない経験ができ、エネルギーがもらえ、お店に行ったことや行列に並んだことが想い出として残ります。その経験が後々に会話のネタとなり、交友関係や仕事がうまくいくこともあります。経験は一番貴重な財産なのです。「家で名店のラーメン食べました」よりも「〇〇ラーメンに朝早く苦労して行って、〇時間並びました」という方が話題性があり、その人物に興味を持ってもらえます。
また、舌だけで味わうのには限界があります。お店の空気も含めた名店の味は『宅麺.com』では再現できないでしょう。
『宅麺.com』のビジネスモデルは素晴らしいと思いますが、私のように古い世代の人間には、やはり実店舗あってこそです。全てを『宅麺.com』で済ませることはできないため、場面によって使い分けるのが私には合っていると思います。